人工芝に発がん性物質が含まれているって本当?人工芝が体に与える影響について
手入れが不要で一年中鮮やかな緑を保ってくれる人工芝は、サッカーやテニスなどの競技場だけでなく、家庭でも使用されていますよね。そんな便利な人工芝が人体に有害だったなんて、みなさんは知っていましたか。本記事にて人工芝が有害といわれている根拠と、どのような人工芝が安全であるかということを、徹底解説していきましょう。
人工芝のゴールキーパーにがん患者が急増
先ずは「人工芝には発がん性物質が含まれている説」を、解析してみましょう。この説の発端は2016年に遡ります。アメリカのワシントン大学の2名の女子サッカー選手が「非ホジキンリンパ腫」の診察を受けた結果、ガンと診断されました。
彼女たちのポジションはゴールキーパーだったのです。そしてこの病院でガンにり患して入院しているサッカー選手はなんと合計38人、さらにくわしく調べてみると38人中34人がゴールキーパーであることが判明したのでした。
■り患した選手の多くが血液のガンだった
38人の選手が患ったガンの種類は、リンパ腫や白血病などの血液のガンでした。ドクターは全員が同じ種類のガンにり患していることから、同じ原因によって発症したと考えたのです。
しかも、38人がサッカー選手であること、さらにその中34人がゴールキーパーであることから、サッカーグラウンドの人工芝に原因があると断定したのでした。
ゴムチップに発がん性の危険性
既にアメリカでは2014年にNBCテレビが「人工芝から高濃度の鉛が検出され、健康被害を及ぼす危険性がある」と、指摘していたのです。そして、人工芝に使われているゴムチップにその原因があると全米で、人工芝の安全性について白熱した議論が交わされていたのです。
この経緯からも、サッカー選手達のガンにり患した原因が、人工芝にあることは容易にたどり着いたことでしょう。
■人工芝のゴムチップは古タイヤから作られていた
ではここで、人工芝とゴムチップの関係性について見てみましょう。なぜ、人工芝にゴムチップが使われていたのかというと、芝草の長い「ロングパイル人工芝」の構造に関係があるのです。
この人工芝はクッション性があり、スポーツ用の人工芝としてよく採用されています。先のアメリカのサッカーグラウンドにも利用されていたのは間違いありません。
この「ロングパイル人工芝」は、芝草を立たせるために「充填剤」と呼ばれる、砂とゴムチップを使っているのです。そして、古タイヤ(廃タイヤ)からゴムチップが生成されていることに問題があったのです。
■古タイヤ(廃タイヤ)には発がん性物質が含まれている
そもそも古タイヤから作られるゴムチップには、「ベンゼン、カーボンブラック、鉛など」発がん性のリスクが高いものばかりが含まれています。ゴムチップは古くなると微小となり、空気上に拡散されやすくなるのです。
サッカーはスライディングなどで、顔が人工芝に近くなることが多いスポーツです。ゴールキーパーとなれば練習時から常に顔を人工芝に近づけていますから、自然にゴムチップを体内に吸い込むこととなってしまったのです。
■ガンにり患しなくても健康被害のリスクは高い
ゴムチップを使用した人工芝を使っていると必ずガンにり患するのかというと、そうではありません。全員が全員100%の確率でガンにり患する訳ではありませんが、少なくとも健康被害のリスクは高くなるのは間違いないことなのです。
人工芝にゴムチップは必要
「そんなにゴムチップが有害なら、ゴムチップを使わない人工芝にすればいいのでは?」そう思う方は少なくないでしょう。ところが、サッカーなどのスポーツで使う人工芝であればクッション性が重要となってくるのです。
もしもゴムチップを使う「ロングパイル人工芝」からゴムチップが使用されない「ショートパイル人工芝」に変えると、選手にとってはケガのリスクが高くなってくるのです。
■スポーツ選手には人工芝のゴムチップは必要不可欠なもの
先に触れていますが、ゴムチップを使用している「ロングパイル人工芝」は、スポーツ選手には欠かせないものとなっているのです。
サッカーに限らず、ラグビー、アメフト、テニス、野球などでは、必ず「ロングパイル人工芝」が使われています。その理由は、クッション性に優れていて選手のケガを防止できるからなのです。
■ゴムチップを使用する「ロングパイル人工芝」の特徴とは
それではここで、ゴムチップを使う「ロングパイル人工芝」の特徴を、再確認しておきましょう。もっとも大きな特徴は「クッション性に優れていて、ケガをしにくい」ことにあります。ひざや腰への負担が軽減される他、スライディングしても摩擦でのやけども起こしにくいのです。
次に、歩いていても踏み心地が柔らかく、天然芝の上を歩いているときと同じ感触なのです。また、きれいなまま長期間人工芝を維持できるので、メンテナンスも容易であることが「ロングパイル人工芝」のメリットなのです。
今は安全性が向上されている
ここまで「ロングパイル人工芝」による健康被害と、その特徴について解説してきました。ゴムチップは、「発がん性物質が含まれていて怖い」とのイメージを持ったことでしょう。そんな危険なものを使ってまで、スポーツをしなければならないのか!?と、憤りを感じた方もいるかも知れません。
しかし、これらは過去のことであり「有害な古タイヤ(廃タイヤ)を材料に作られたゴムチップを使った人工芝」でのお話になります。現代では既にその問題は解決されていて、安全安心な「ロングパイル人工芝」が使われているのです。
■現代のロングパイル人工芝の構造
昔のロングパイル人工芝には、有害物質が含まれるゴムチップが利用されて問題となっていましたが、現代のロングパイル人工芝には有害物質は含まれていません。ですから、スポーツ選手は安心して戦えるのです。
ここで、現代の代表的なロングパイル人工芝の構造について解説しておきましょう。底部から「暗渠排水・砕石路盤・透水アスファルト・人工芝基布・珪砂(けいしゃ)・ゴムチップ」の順に重なっています。
人工芝自体は下から4番目の人口基布から植えられていて、珪砂(けいしゃ)とゴムチップによって支えられる構造となっています。
■ゴムチップは安全安心の4種類が存在
現代のロングパイル人工芝に使われるゴムチップは取り扱う企業によって異なりますが、ここでは4種類のチップを解説しておきましょう。
温度上昇抑制効果と高い保水性を備えた「樹脂押出チップ」、天然有機質100%の「天然チップ」、温度上昇抑制効果のあるカラーのゴムチップである「粉砕ゴムチップ」、程よい弾力のある「黒ゴムチップ」です。
いずれのゴムチップも国内生産されたタイヤゴムを原料にしているので、昔のような有害物質はまったく含まれていないのです。
■ロングパイル人工芝は家庭では使わない!?
今回記事内で解説してきたロングパイル人工芝ですが、実は家庭で使われることはないのです。その理由は、先の現代のロングパイル人工芝の構造でもお伝えしたとおり、この人工芝には「透水アスファルト」が使われるので、大工事になってしまうからなのです。
また、サッカー場ほどの広さの庭があるなら別ですが、個人所有の庭ならショートパイルの人工芝で充分なのです。
■一般家庭利用なら40mmのショートパイル人工芝で充分
一般家庭で利用するなら40mmのショートパイル人工芝で、充分気持ちよく利用できますよ。ロングパイル人工芝は50mmから70mmなので、約半分くらいの長さになります。
ホームセンターなどで購入する際に、「ロングパイル人工芝」と表示されている人工芝を見かけるケースもあるようですが、中身は40mmのショートパイル人工芝なのでご注意ください。
ショートパイル人工芝は大規模な工事は不要なので、人工芝自体の価格と施工面でも低コストで導入できるのです。
自宅に人工芝を敷きたいと考えられているなら、20mmから40mmの長さのショートパイル人工芝がおススメです。健康に有害な素材も使われていませんし、低コストで購入できて自分で敷くことも可能ですからDIYで楽しく敷くことができます。
ただし、40mmでもクッション材を入れないと、1年ほどでペッタンコになってしまうかもしれません。ですから、まずは人工芝専門店に相談することをおススメします。用途に最適な人工芝の選定から購入、施工方法までプロがアドバイスしてくれるので、失敗しない人工芝選びができるのです。